質のよいたんぱく質とビタミンB1が豊富な豚肉は、毎日の食生活に欠かせない食材のひとつ。南信州は、血統や飼料、肥育環境などにこだわって育てるすぐれた銘柄豚の産地です。単に生産効率を優先するのではなく、時間と手間をかけ、命に向き合う生産者たち。ストレスなく健やかに育った豚たちは、おいしい肉となって私たちの健康を支えてくれるのです。

日本における養豚の歴史

豚は、長い年月をかけて野生の猪を家畜化する中で進化してきました。日本での養豚の歴史は古く、奈良時代に完成した『日本書紀』に「大陸から渡来した人の家で猪(豚)を飼っている」の記述があることから、西暦600年頃には渡来人によって猪(豚)を家畜として飼育することが広められたと考えられています。その後の仏教伝来に伴い、殺生を禁ずる思想から食肉の習慣はなくなり、養豚も衰退していきました。その後再び豚が飼われるようになったのは、江戸時代になってからのこと。明治時代になると畜産の振興が進められ、西洋の飼育法を取り入れた養豚が全国に広まっていきました。

昭和40年代前半までは、農家の副業や堆肥生産の手段として、庭先で数頭程度が飼育される庭先養豚が多く見られました。その後、生産効率の高い大型の豚が広まるようになると、食生活の洋食化や栄養価の高い飼料の導入とともに、養豚を専業とする農家や企業養豚が急速に普及していきました。

現在、輸入自由化によって安価な豚肉が市場に並ぶようになりました。質が高くいつでも安心しておいしく食べられる肉を届けたい。日本の養豚は、生産者のそんな想いのこもった銘柄豚の時代に入っています。

豚肉の部位

バラ、ロース、ヒレ、モモ…。肉屋さんやスーパー、そして焼肉店のメニューで見かける豚肉の部位。肉質や脂の付き方はなんとなくわかるけれど、実際に豚のどの部分にあたるのかわからない方が多いかもしれません。豚肉の部位とその特徴を知ると、適した料理や食べ方がわかるとともに、焼肉での楽しみも増えることでしょう。

南信州の銘柄豚 (5品種9銘柄)

南信州の養豚と系統品種

日本での養豚における系統品種(純粋品種)は6種あり、南信州ではそのうちの5種の組み合わせによる9つの銘柄豚が飼育され、その肉や加工品を購入することができます。

品種として記されたアルファベットは、銘柄豚を産む母豚の親原種(母・父)と掛け合わされる原種の順に表記されています。たとえばLWDの場合、母豚はランドレースを母に大ヨークシャー種を父に持ち、デュロック種と掛け合わされた銘柄豚、BDの場合はバークシャーの両親を持つ母豚とデュロック種を掛け合わせた銘柄豚ということになります。

一般的に「三元豚」と呼ばれる豚は、三つの原種の掛け合わされた豚のことを指しますが、南信州の銘柄豚はこうした品種だけではなく、生産者それぞれが飼料や飼育環境、管理システムなどにこだわって飼育されています。

南信州の銘柄豚