南信州牛とは
ABOUT MINAMI SHINSHU GYU
南信州牛とは?
1934年(昭和9年)を原点に、戦中戦後の激動期を乗り越えてきた飯田下伊那地域産の「南信州牛」。今、目利きぞろいの京都の市場で「特選牛」の認定を受けるなど、食肉評価の頂点を極めつつあります。日本全国の名だたるブランド牛に勝るとも劣らぬ、きめ細かな霜降りと最上質の味わい。長野県南端の山ふところに抱かれ、豊かな水と大地に育まれた「南信州牛」は、和牛肉の新たな芸術品です。
「南信州牛」の定義
出生からと畜(※)の期間内において、飯田下伊那地域の飼養期間が最長であり、かつ最終飼養地である和牛。
※と畜…家畜を殺すこと
(南信州牛ブランド推進協議会の策定による)
※生肉の写真は、南信州牛も多く認定されている「信州プレミアム牛肉」です。
品質
「特選牛」は霜降り肉の芸術品
出品された黒毛和種の枝肉(頭、内臓などを取り除いた骨付き肉)のうち、歩留まり等級(ある決められた部位からどれだけ多くの良い肉がとれるかの基準)と肉質等級において「A5、またはB5」ランクであり、且つ霜降り(サシとも呼ばれる脂身の入り方)の具合を表す「BMS」の値が最上級の「No.12」と格付けされたものが京都食肉市場の「特選牛」です。同市場で取り引きされる和牛枝肉のうち、わずか0.8%のみが特選牛の認定に値しており、南信州牛はまさに厳選枝肉の証明といえる称号を獲得しています。
おいしさの秘密はオレイン酸
こうした霜降りの見事さに加え、香り・口どけの良さに直結する脂肪成分である「オレイン酸の含み具合」が南信州牛の魅力のポイントです。「不飽和脂肪酸」とも呼ばれるオレイン酸は融点(物質が解け始める温度)が10~20℃程度と極めて低いため、食べたその瞬間に口の中でなめらかに解け始めます。但馬牛系の和牛(※次の項参照)にはこのオレイン酸が非常に多く含まれているという研究結果もあります(※1)。
但馬牛直系の南信州牛の肉が美しく、おいしいと評価されるのはこうした特長によるものです。
※1 兵庫県立農林水産技術総合センターのウェブサイト発表記事「ここまでわかったおいしい牛肉の秘密!!」などによる
歴史
兵庫・宍粟郡生まれの但馬牛をルーツに
南信州牛の歴史は1934年(昭和9年)、兵庫県の宍粟郡(しそうぐん=現在の宍粟市とほぼ同一地域)から黒毛和種のメスの子牛49頭が飯田下伊那(南信州)地域に初めて連れて来られた時から始まりました。当時、この地域の農家の主産業は養蚕でしたが、下伊那郡上郷村(かみさとむら=現飯田市上郷)の役場などが中心となって和牛導入を推進。農耕に用いる「役畜」として馬が多く飼われていましたが、「馬は手放す時に金がかかるが、牛なら年に一つの子牛を取り、農耕にも使え、最後は肉用として高く売れる」と多くの利点を判断して和牛飼育が本格化した―、との記録(※2)が残っています。
名だたるブランド牛肉と肩を並べる
兵庫県では北部の但馬(たじま)地方を筆頭に、名牛として名高い「但馬牛」を県下全域で産しています。但馬と接する播磨(はりま)地方西北端の宍粟郡では、江戸時代から伊和神社(一宮町)境内で牛の大きな市が開かれるなど畜産がとても盛んでした(※3)。但馬牛といえば神戸ビーフ(いわゆる“神戸牛”)、松阪牛、近江牛などの名だたるブランド牛肉の始祖牛とされる存在。戦前に関西から南信州へと渡った但馬の血統の母牛たちが、現在の南信州牛のルーツとなったのです。
※2「牛のあゆみも50年 和牛導入50周年記念誌」飯田中央農協肉牛部会上郷支部編 より
※3「新但馬牛物語」新但馬牛物語刊行会編 より
ミニ知識
南信州牛と信州プレミアム牛肉
長野県産の牛肉には産地によっていくつかの名称(ブランド)があり、「南信州牛」はJAみなみ信州管内(飯田下伊那地域)で生産された和牛の総称です。長野県内のJAグループに出荷された和牛は、南信州牛を含めて「信州和牛」として全国に流通していますが、その中でも長野県が定めた一定の基準を満たした品質のものは、県産で最高品質の「信州プレミアム牛肉」という認定を受けられます。南信州牛を高く評価している目利きの仕入れ業者は、あえて信州プレミアム牛肉の中から南信州牛を指定してセリ落としているというわけです。
和牛・国産牛・交雑種
「和牛」とは日本在来の牛をもとにした肉用牛を指し、一部、褐毛(あかげ)和種なども存在しますが全体の9割以上を黒毛和種が占めています。この「和牛」という呼び方は牛の種類を表す言葉ですが、種類ではなく産地を示す言葉として「国産牛」という呼び方があり、「和牛=国産牛」というわけではありません。例えば外国産の乳用牛として知られる白黒のホルスタイン種なども、日本で3ヵ月以上飼育されていれば国産牛に分類されます。また、ブランド牛肉として扱われる高級和牛に品種交雑はありませんが、品種改良によって味の良くなった「交雑種」も数多く存在します。例えばホルスタイン種の母牛と黒毛和種の種牡(=オス)の一代交雑種は「F1」と呼ばれますが、一般に和牛よりも大きく成長するため枝肉が多く取れ、また味も良いとの定評があり、幅広く流通しています。