コンパクトな飼育頭数管理で効率肥育

[肥育農家]

柴田千恵子さん

(飯田市山本)


〜 “2頭飼い”で成長を競わせ より大きく 〜

 夫とともに約40年間、肉牛肥育に携わる柴田千恵子さん。柵で区切った6つの牛床で「2頭ずつ、最大12頭まで」を目安に肥育農家業を続けています。年間を通して2か月に一度、2頭ずつを市場に出していけるようにという計算です。「同じ月齢同士で2頭飼いをすると、競争意識で2頭ともエサをよく食べるんです。1頭だけにすると元気な牛でも食べる量が減ってしまうから」
 50頭程度まで飼育頭数を増やしたこともありましたが、素牛(もとうし)価格の高騰などもあって規模を抑制。市場で確実に評価されるような牛を育てるための頭数管理を図るなど工夫が実り、京都食肉市場から第16号特選牛認定(2016年8月)を受けたほか、国や県の共進会でもたびたび最優秀賞などを受賞してきました。
 「肥育期間のうち、後半の1年間は良い牛にするための仕上げの期間。朝晩とも、ふすま(小麦粉の副産物飼料)を1頭につき1杯ずつ多く与えて食欲を増進させます。ふすまはおかずみたいなもので、味があっておいしいんですね。費用はかかるけれど体がぐっと大きくなり、サシ色も鮮やかに乗って高評価につながります」
 一方で、“一に素牛、二に飼い方”という考え方を常に意識。1頭を2年近くにわたって手塩にかけて育て上げるだけに、子牛(素牛)の選びにこだわります。「まずは人懐こい素牛を買うことが第一。育てやすい子牛は良い牛に成長する。だから顔が見えて信頼できる地元の繁殖農家から、できるだけ買うようにしています」
 そう語る柴田さんが最も信頼を置く繫殖農家は、同じ市内山本地区の唐澤朝子さんが営む牧場(※別の項を参照)。「唐澤さんが育てた子牛はよく懐いてくれて、愛情をたっぷり受けていると感じる。肥育段階でも飼い主を信頼してくれるので、あとはストレスのない状態でよく食べさせて育てれば、市場の評価にも裏切られることがないですね」

小麦の糠(ぬか)である「ふすま」を毎食、1頭に1杯ずつ余分に与える

(2016年11月に取材)

生産者の声